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祥太郎さんがいる左隣に全神経を集中させていると講義が終わり、当たり前に講義室を出ようと立ち上がる祥太郎さん。
「じゃな、サナ」
「っ」
ようやく覚えたらしい私のチャンネルでの名前を口にして、鞄と、ラケットの形をしたケースを肩にかけて歩き出す。
サワさんはソワソワした様子で私に手を振り、祥太郎さんの後ろをついて行く。
どうしよう、行ってしまう。
学年も違うし、他の講義は被ってないから、また1週間は会えない。接点もない。
せめて連絡先を…っ
「あのっ」
追いかけて声をかけると、ようやく声も認識してもらえたらしく、祥太郎さんが振り返る。
「?何?」
「学食、行くんですよね…?」
「そーだけど」
「…ご一緒してもいいですか…?」
手を背中側に回して、もじ、と恥ずかしそうな仕草をする。
あ…つい癖で、あざといのやっちゃった。
ちらっと見上げると、サワさんは「可愛い…」と顔に書いてあるけど、祥太郎さんは無表情でじっと私を見ている。
だ、だめなのかな。
それとももしかして、こういうぶりっこっぽいのは嫌い…?私これが売りなのに…
さぁ…と顔を青くしていたけど、祥太郎さんからは意外な返事が返って来た。
「いいけど」
なんで?って顔してる。
いや、分かるでしょ…
明らかに好意見せまくってるじゃん…
「ありがとうございます…っその、お腹空いちゃって…」
「そんな細ぇのにやっぱ腹は減るんだな」
「そりゃ減りますよ…」
「じゃぁとりあえず行こ」
そう言って早足でスタスタ歩いて行く祥太郎さん。
慌ててその後ろを追いかける。
だいたい男の人は私に歩幅を合わせてくれるから、こんなに必死になって追いかけたことはなかった。
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