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きゅん、とトキメキをいただいていたところで、周りからの視線に気がつく。
そういえば学食に来るのは初めてだし、さっきからすごく見られている。
変装…すればよかったかな。
でも大学内だとsanaがいるのは有名だし、今更変装したところで逆に目立つんだよね…
「え、sana学食とか来るんだ」「男と2人じゃん。彼氏なのかな?」「相手どんなやつ?」という言葉が嫌でも耳に入ってくる。
普段なら噂されようもんなら顔を上げてファンサするところだけど、今は祥太郎さんにただただ申し訳なくて、どんどん肩身が狭くなった。
「…あの…すいません…」
「だからゆっくり食えばいいって」
「そうじゃなくて、その…すごく見られてるから…」
俯きながらそう言うと、祥太郎さんはやっと周りの視線に気がついたようで、さらっと辺りを流し見た。
そして自分がどう言われようがどうでもいいみたいな顔で、また普通に私と向き直る。
「なんで謝んの?」
「え…」
「別にサナ、何も悪いことしてねぇじゃん」
平然と、そう言ってのける。
偽りのないその言葉。
急に泣きそうになるくらい、胸が熱くなった。
何なんだろう、この人…
本気で言ってるみたい。
こんな人、本当にいるんだ。
彼が真っ直ぐすぎて、いつも周りにどう媚びようかとかそんなことばかり考えている自分が恥ずかしくなってくる。
「ありがとう、ございます」
こんなにごにょごにょお礼を言うなんて、私らしくもない。
お礼はいつも、そっと手に触れて、可愛く見える角度で首を傾げて、少し上目に見て言うのが鉄板なのに…
「なぁ、これ一個ちょうだい」
そもそも聞こえていないらしい彼が私のおにぎりに添えられていたたくあんを勝手に一ついただいている。
いや、いいですけど…
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