ずるいです。

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そう思ってちらっと彼がいた方を見ると、すでにその姿はない。 え。どこ行ったの… 見るといつの間にかコートの中に入ってポンポンとラケットでボールをバウンドさせている。 そして反対側のコートに立つのは……女の子。 「〜っ?!」 ちょっと?! 何よその女?!誰?! ゴォォォッと燃え上がる嫉妬をなんとか鎮火させようと顔に笑顔を貼り付けるも、うまくいかない。 祥太郎さんがサーブを打とうとボールを上に上げる。 するとそこに、ものすごい速さでボールが飛んでいき、咄嗟に彼がラケットでガードした。 「っあっぶねぇな!春野!」 「顔は避けたって」 「そういう問題じゃねぇ!」 「何言ってるの君が悪いんでしょ」 「はぁ?」 「真白返して」 「何言ってるのはお前だよ!」 声を荒げている祥太郎さんに構うことなく、ズカズカコートに入っていき、相手の女の子をフェンスの外に連れ出していくその人。 彼のことは知っている。 春野彼方。 成績優秀。眉目秀麗。家は会社をやっていて超お金持ち。 大学の有名人だ。………私の次に。 最近遊びはやめて本命の彼女ができたって噂、本当だったんだ… 「あ、あの、彼方…私がラリーしようって言ったの…今日祥太郎以外テニス経験者いないから…」 「俺がいるでしょ?」 「で、でも、そしたら祥太郎が…」 「彼はいいの。壁とでも打ち合ってもらおう」 「おい聞こえてんぞ」 後に続いてフェンスの外に出てきた祥太郎さん。 「なんだよお前4月からちゃっかりこの時間空きコマにしてんな」 「目を離すとすぐ君が俺の真白に近づこうとするからね」 「人聞き悪りぃな。別に真白じゃなくてもいいんだよテニスできるやつがいれば」 「しょ、祥太郎ちょっとひどい…」 「ひどくねぇわお前はこの猛犬をちゃんと管理しろ」 3人でそんな会話をしていて、祥太郎さんは男の子に囲まれてる私には目もくれず。 完全に存在を忘れられてる… でもよかった。春野彼方の彼女なら、そんなにジェラシーする必要はなさそう。
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