待ってください。

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「てかあの噂聞いた?」 「知ってるー。人の男寝取ったってやつでしょ?」 ───! だけどその話には、思わず動揺してしまう。 「彼女いる相手に手出したらしいよー?」 「うわ最悪じゃん」 「やばすぎ。ただのビッチでしょ」 ぎゅ、と携帯を握る力が強くなる。 大抵のことは鼻で笑って流せるけど、この話は今の私にはタイムリーすぎる。 ……つい1週間前、すごく好きだった社会人の彼氏に、何年も付き合っている彼女がいることが発覚した。 もちろん彼女がいたなんて、そんなこと私は知らなくて。 私の仕事のことも、忙しいのも理解してくれてて、優しくて、大好きだったのに… たまたま編集が早く終わって彼の家に行くと、知らない女がいた。 聞けば、彼女だと言う。それも高校の時からの付き合い。 ブチギレて、思い切りビンタしてやった。 家に帰って、動画撮影があるのに、目が腫れ上がるほど泣いた。 最悪の別れ。 私は悪くない。それなのに… 「金持っててちょっと有名だったら何しても許されると思ってんじゃない?」 …お金があるのも、有名なのも、努力したからなのに。 私だってフォロワー1万人で停滞してた時だってあるんだから… 「自分大好きって感じで、痛いよね」 自分が大好きで何が悪いのよ。 大好きじゃないと自信なんて持てないし、インフルエンサーなんてできないんだから。 「寝取ったことコメしまくって炎上させちゃう?w」 本当のことは何も知らないくせに… むかつくけど、何も言えない。 ここで下手に言い返して大事になればそれこそ炎上のネタになって奴らの思うツボ。 ぐっと我慢して、出てきそうになる涙を必死で乾かそうとしていた時。
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