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「…ありがたいことに知名度が上がってから、友達ができても、私が“sana”だから仲良くしてるんじゃないかとか、いろいろ考えちゃって。…だからサークルにも一度も行ったことなかったです」
静かにそう話している間、祥太郎さんのアイスを食べる音だけが聞こえた。
そして話が終わると、「そっか」と返事が返ってくる。
「大変なんだな、ユウメイジンは」
「…本当に思ってますか?」
「それもよく言われるんだよな……“本当に思ってる?”って」
「だ、だって…」
言っている間に、なぜか通りがかった公園に入っていく祥太郎さん。
アイスを口に咥えたまま走り出したかと思えば、鉄棒に掴まり、くるっと軽々逆上がり。
そのまま上に乗り上げて鉄棒の上に座ってしまう。
「あ、危ないです…っ」
運動神経が良くない私からするとありえなくて、わたわたと鉄棒の下で慌ててしまう。
そんな私を見ておかしそうに笑う祥太郎さん。
そんな子供みたいなところもキュンなんですけども…
「あんなにお酒飲んだのに、気持ち悪くないんですか…?」
「ないよ。吐いたらリセット。すげぇよな、俺の体」
自分で言ってる…
よっと、と後ろ周りして彼が下に降りてくる。
その際にポケットに入っていた携帯が結構な音を立てて地面に落ちて、私の方が顔面蒼白。
当の本人は「あ、」と大して気にしていない。
「っ画面割れてないですか?!」
「平気だろ」
「本当に?!」
急いで携帯を拾い上げると、画面は無事で、ほっと息をつく。
砂まみれの携帯を手で払おうとすると、パッと祥太郎さんがそれを取り上げた。
「いーよ、手汚れんぞ」
そう言って、自分の着ているパーカーの裾で携帯をゴシゴシ。少し砂がついた私の手のひらも一緒にゴシゴシ。
…大雑把すぎる…
でもそういうなんでもない優しさや気遣いを即座にできる人って意外といない。
本当に、いちいちキュンとする。
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