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「じゃ、また講義でな」
「………」
ですよねー…
ひらっと手を振って、相変わらず微塵も名残惜しさを見せずに踵を返す彼。
スキップでもしそうなくらい颯爽とした足取り。
「〜っ…」
も、もう〜っ…
なんでそんな感じなの?!
仮にもまぁまぁ有名な女性インフルエンサーが目の前にいるのに、ちょっとは下心とかさぁ…っ
だけどそんなことを心の中で嘆いていたって何も変わらない。
結局、私の方が居ても立っても居られなくなって、また引き止めるはめになる。
出会ってからずっと、追いかけてばかりだ。
「ちょ、ちょっと待って…っ」
くい、とそのパーカーの裾を引っ張ると彼が振り返る。
その表情は予想に反して、悪戯っ子みたいなものだった。
「来るだろうなって、ちょっと待ってたわ」
なんて言って、笑ってる。
「〜っ…」
っなに、もおぉぉっ…
ちょっと可愛いし。ずるい。
もうやだこの人。
「〜っお願いがあるんですけど…っ」
「お願い?」
なに?と私の言葉を待つ彼。
なかなか言い出さない私をじーっと不思議そうに見ている。
「……その…名前で呼んでほしくて…」
「名前?なんで?」
瞬時に疑問系でぶった斬られる。
なんで?がこんなに大きなダメージになるなんて…
でも、せっかく勇気を出して言ったんだから、引っ込めたくない。
「…もっと仲良くなりたいから、です」
馬鹿みたいにもう一度、そう言ってみせる。
…なんかもうこれって告白してるようなもんじゃないの…?
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