ずるいです。

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ドキドキしながら返事を待つと、考えるような顔をしていた祥太郎さんがようやく口を開いた。 「つーか“サナ”って、名前じゃないんだ?」 まさかの返事。 ガク、と項垂れる。 本当にこの人、私に興味なさ過ぎじゃない…? 私のフルネームなんて、大学の人は大体知ってると思うんだけど… 「…真田っていう名字で、sanaなだけです…」 「あ、そうなん?」 へぇー、と本当に初めて知ったという反応。 どんどん勇気が萎んでいって、俯いたまま指を遊ばせた。 そこで、彼が言う。 「いーよ」 「え…」 「で、名前なんだっけ」 「………」 もうこの際そのことに関しては何も言いません。 「……伊都、です」 「いと?」 復唱されただけなのに、どきっと心臓が跳ね上がる。 「っ…はい」 「分かった。次会った時覚えてたら呼ぶわ」 いやお願いだから覚えててください… 名前で呼んで、なんて、もう一回自分から言える気しないです… だけどそんなこと知りもしない彼は今度こそ帰って行こうとする。 「じゃ、」 「あ、あのっ」 「まだあんの」 もはや慣れたような顔で笑われている。 でもそんな顔もかっこいいです…   「連絡とか、してもいいですか」 「いいけど、俺返事返さないよ」 「え、」   がーん。と顔に出ているだろう私に、祥太郎さんが続ける。 「電話なら出るから。用あんならかけて」 「…用がないとだめですか」 「用ないのに何話すんだよ俺と」 呆れたように笑う彼の攻略が本当に難しすぎる。 〜もうっ、声が聞きたいとか! あるじゃないですか! と言えれば苦労しない。 ていうか電話とかハードル高いしちょっとした用事くらいじゃかけれる気がしない… おそらく会えるのは、話せるのは、また1週間後。 長い…長すぎる…
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