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「じゃぁ講義始まるので…」
「あ、あの、待ってください」
腕を掴まれて呼び止められる。
驚いて振り返ると、なんだか息が荒い、ファンだと言ってくれた子。
「は、はい…?」
「俺とっ、一緒に食事とか、してくれませんか」
「…え…あの、ちょっとそういうのは…」
「お願いです!一度だけでいいですからっ!!」
掴まれている腕に力が入って痛い。
声が大きいその人に、周りが驚いたように私たちのことを見た。
「ごめんなさい。お気持ちは嬉しいんですけど、ファンの方とそういったことはできないんです」
「そこをなんとかお願いします!そしたらもう遠くで応援するだけにしますから…!一回だけ…!!」
詰め寄ってくる彼に、だんだん怖くなってくる。
まずい、やばいタイプの人だ。
たまにこういう人に出くわすけど、いつもマネージャーやスタッフがいる時で、大学内では初めてだった。
どうしよう。下手に追い返してストーカーみたいになられても困る。
「あの、だから…」
「お願いします!OKもらえるまで俺、帰りません!」
「…っ…」
周りには人がたくさんいるのに、誰も助けてくれない。
いつもは頼んでもないのに声をかけてくるのに、こういう時は知らん顔。
世の中ってこんなもん。
本当に困った時は、自分でどうにかするしかない。
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