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「しょうもな」
そんな、なんの躊躇いもない堂々とした声が聞こえた。
顔を上げると、斜め前の席に座っているパーカー姿の男が頬杖をついてアンチ3人組を眺めている。
「わざと聞こえるように言ってんなら面と向かって言えば?さっきから、気分悪い」
そう吐き捨てて、もう話は済んだと言うように視線を外す。
「っお、おいっ…」と焦っている彼の隣の友人。
そりゃそうだよね。
こんな女の陰口、よくあることだし、みんな見て見ぬふりするのに。
「…はっ?なに、だる」
「クソ陰キャのくせに」
「いいじゃんもう、あっち行こ」
そう言って遠くの離れた席に移っていくアンチ女3人組。
心がスーッとして、正直すごく助かった。
思わずその男の背中を見ていると、友人との会話が聞こえてくる。
「クソ陰キャとか言われてやんの」
「うっせ」
「……お前さぁ…よくああいうの言えるよな」
「なんで?本当のことじゃん」
「そうだけどさ…」
そう言ってちらっと私の方を見てくる友人Aさん。
目が合ってぺこりと頭を下げると、頬を染めてぺこぺこ何倍も頭を下げられる。
たぶん私の方が年下だけど、知名度がそうさせてるんだと思う。
だけど肝心のパーカーの彼はこっちを振り返りもしない。
…照れ屋さんなのかな。
そんなことを考えていると教授が入って来て講義が始まった。
あとでお礼言いに行こうかな。
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