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結局、今日彼はサークルに行くの行かないのかもよく分からない。
絶妙に適当で、本当に掴めない、この人。
呑気にプリントに落書きしてる彼をジトっと横目で見ていると、今度は何やら文字を書き始めた。
左利きの人って、書き方独特だよなぁ〜なんて思ったところでハッとする。
私、今、祥太郎さんの左側に座ってる。
よく見れば私と腕が当たらないように少し斜めに座ってるし…あぁもう私って本当に…っ
だけどもう講義は始まっているし今更席を立つわけにも行かない。
〜っ壁側譲ってあげればよかった…
気が利かない自分にずーんと落ち込んでいると、隣から腕をトントンされた。
なに…?と半べそでそちらを向くと、祥太郎さんが自分のプリントを指差している。
…?さっき書いてたやつかな?
“腕、痛くねーの?”
「っ」
本当に、意外とよく見てる。
さっきのファンに爪が食い込むくらい強く腕を握られて、実はまだちょっと痛い。
でも跡が残るほどのものではなくて。
“平気です”
そう文字を書いて返事をする。
するとまた何か書き始める祥太郎さん。
“ラケット持って来た?”
それを見て急いで横に置いていたラケットを見せて全力でアピールする。
私の必死な様子に、祥太郎さんが声を出さずに笑った。きゅん、と心臓が音を立てる。
笑った顔可愛いんだよなぁ…
また好きが溢れてきてそわそわしていると、サワさんに呼ばれたようで反対側を向く祥太郎さん。
内緒話したみたいでドキドキしちゃった…
テニス楽しみだなぁ…
ふぅ、と頰に手を当てて熱を冷ましながら窓の外を眺める。
ぽつ、とそこに水滴がついたかと思えば、一気に土砂降りになり、呆然を通り越して絶望した。
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