どうしてですか?

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「今日はテニスなしだって」 学食を出た後も止まなかった雨。 サークルのグループトークを確認したらしい祥太郎さんがそう言って携帯をポケットにしまう。 ふぁ、と欠伸をする彼の隣で、まだ現実を受け止められない私。 …どうしよう…1週間この日を楽しみにしてたのに、もうバイバイになってしまう。 何か、何か、引きとめる口実を…っ 「で?」 「…え…?」 頭をフル回転させて考えていると、不意に話しかけられて、顔を上げる。 「今日はどうやって俺のこと引きとめんの?」 「っ…」 にや、と意地悪な顔で笑った彼に、顔が沸騰したように熱くなった。 〜っな、なにそれずるいいぃぃ…っ 「え、えっと…っ」 「用ないなら帰ろうかな」 「っだめ…!!」 慌てて腕を掴むと、分かっていたように笑いを堪えている。 っ祥太郎さんに、意地悪されてる…! 最初の頃からは考えられなくてドキドキしてくる。 「…今日、飲み会があれば行きますか…?」 「今日は行かない」 「な、なんでですかっ…?」 来るなら、夜も会えるかと思ったのに… だけど返って来た返事は予想外のものだった。 「誕生日だし、バイト入れた」 「っえ」 誕生日になんでわざわざバイト入れるの?! ていうか、 「誕生日って今日なんですか?!」 「うん」 「なのにバイト?!」  「じゃないと飲み会無理矢理連れて行かれて飲まされんだろ」 なにその慣れすぎた対処… よっぽど普段から飲まされてるんだな… 「お祝い、したかったのに…」 「いーよ別に」 「よくないですっ…!」 「なんで?」 出た。“なんで?” 〜っ好きな人の誕生日だからに決まってるでしょ!!
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