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「父親が事故で死んでから、母親は仕事でほとんど家いなかったし」
さらっと告げて、「うまそー、いただきまーす」とフォークをフレンチトーストに刺している。
急に告げられた事実に何て言えばいいのか分からなくなっている私の顔を見て、祥太郎さんがもぐもぐしながら言う。
「そんな顔しなくてももう平気だから。10年以上前の話だしサークルでも普通に話してる。あとこれ、めっちゃうまい。さすが“sana”」
そう言う祥太郎さんは強がっている感じでもなく、本当に平気な顔をしている。
きっとものすごくつらくて寂しい時期もあったはずなのに、こうやって乗り越えて、そんな素振りも見せずに普通に過ごしている。
何不自由なく生きてきた人に見えていたのに、人を第一印象や見かけで判断したらいけないことを痛感させられた。
「…ご兄妹はいるんですか?」
「いるよ。弟が2人」
「ぽい…」
「だろ」
ふ、と笑って、「うまい」「天才」と次々とフレンチトーストを口に運んでいる。
本当にこの人、おいしそうに食べてくれるなぁ…
「お母さんはどんな人なんですか?」
「んー、仕事場では頼られてるみたいだけど、家では優柔不断な上に弟2人甘やかすから、俺がこんな風になった」
「こんな風?」
「言うこときついってよく言われる」
思わず吹き出してしまった。
たしかに…
「…でも正しいことしか言わないじゃないですか」
「そうだっけ?言いたいこと言ってるだけ」
簡単に言うけど、なかなかできないことだ。
今の時代、すぐ揚げ足とられて叩かれるしさ…
長いものに巻かれろだよ…
「おかわり」
ある…?と若干不安そうな祥太郎さんがツボすぎて悶えた。
可愛い…なんかもういろいろギャップ…
さっきの話を聞いてしまったせいか、「ありますよ」とよしよししてあげたくなってしまう。
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