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「誰?」
だけどその口から放たれたその言葉に、ピシャーンッ!と衝撃の雷が落ちた気がした。
だ、だ、誰?って…
最近では言われることのないその言葉に、ガーンガーンと頭で鐘が鳴っている。
呆然としていると、友人Aさんがバシッと彼の頭を叩いた。
2人はこそこそと話し始めるけど、普通に聞こえてる。
「は?!お前sanaちゃん知らねぇの?!」
「サナ?何それ」
「…あー、SNS一切やってないんだっけ」
「やってない」
「いやそれにしたってだろ。ガチの有名人だぞこの子…」
そう。私、有名人なんです。
みんな私とお近づきになりたくて必死なんですよ?
現に友人Aさんはさっきからずっと私のことをちらちら見てる。
ようやく自信を取り戻して、コホンと咳払いをした。
少し取り乱してしまったけど、冷静に冷静に…
「あの、さっきはありがとうございました」
そう言うと、パーカーの彼が私のことを見る。
興味も好奇心も下心も見えないけど、真っ直ぐ目を見る人だなと思った。
「さっき?…あぁ、言われてた子か。別に、思ったこと言っただけだから」
「でも…助かりました。何かお礼をしたいんですけど…」
そう言って、意図的に彼を見上げるように見てみる。
自分の可愛い角度は分かってる。
さすがに、知らないとはいえ嫌な気はしないでしょ?
お茶でもご飯でも、特別に行ってあげる。
この私がそう思ってるのに。
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