花言葉は知らない

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花言葉は知らない

「せーちゃん、なにつくってるの?」  ふわっと甘い香りが鼻腔をくすぐる。お菓子やジュースとは違う、自然の香り。  空は高く、雲ひとつない青空。半袖では少し肌寒い初夏のある日。  千晴は短パン半袖で草原の中でしゃがんでいた。隣に座る白のワンピースを着た星依が器用に花を組み合わせて何かを作っている。千晴は星依と花を見比べて首を傾げた。 「ブーケだよ」 「ぶーけ?」 「テレビで見たんだぁ。結婚式にね、花嫁さんがふわって投げるの。で、キャッチできたら次はその人がお嫁さんになれるんだって」  ニコニコ笑いながら話す星依の横顔を千晴はまるで睨みつけているような細い目で見つめる。側から見れば威嚇しているようなその視線に星依は目を合わせると首を傾げてニコッと笑った。 「な、なんだよ」  日差しのせいにしたいくらい眩しい笑顔に千晴はバツが悪そうに視線を逸らした。 「そんなのなくたってなれるだろ」 「ふふっ。千晴がしてくれるの?」 「ば、っ……」
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