第八話

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第八話

「よぉ。やっと目覚ましたか」 まだ重い瞼を開けると、豊川さんの顔が視界に入った。 あれ?撮影は...と思いながら何度か瞬きをして周囲を見渡すと、そこは病院のようで。 頭の上には吊るされた点滴がある。 「お前、大丈夫って言葉の意味を知ってるか?」 「...」 「撮影中に倒れるやつは、大丈夫って言葉を使う資格はねぇんだよ」 目覚めて早々、しっかり怒られている私は、まだ回り切ってない頭で言葉を噛み砕いた。 「...すみません」 「はぁ。すみませんって言葉の意味もわかってるか?」 「...」 あまりの失態に、自分でも信じられなかった。 仕事をする大人として、ありえないことをしてしまった。 主演としての責任感もないし、多くの人に迷惑を掛けてしまった。 本当に女優失格だ。
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