仲の良い先輩と後輩

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仲の良い先輩と後輩

 眠ることができずに朝になった。支度をして家を出る。  学校には深月さんがいる。でも深月さんを見ることができない。  昼休みになっていつものように屋上前の踊り場に集まるけれど、会話に入る気にはなれなかった。 「久志はどうかしたのか?」 「昨日は彼氏ができたって浮かれてたじゃん」  昨日の深月さんの顔が浮かんだ。自責の念に駆られて胸が痛む。 「……振られた」  小さく漏らすと、騒がしかったのにしんと静まり返る。  昨日集まった百円を全員が財布にしまうところを見ても、突っ込む気にもなれない。 「今日はパァッと遊ぶか?」 「遊ばない」  思ったより冷たい声で、慌てて謝った。 「わるい、今日はそんな気分になれないけど、また今度誘ってよ」  一週間ほど経っても、深月さんを見ることができない。周りに気を遣われていると分かっているのに、今までと同じような振る舞いもできない。  スマホが鳴る。渚先輩からのメッセージだ。 『今日一緒に帰ろうよ』 『はい、終わったら連絡します』  授業を受けてHR後にスマホを見ると、渚先輩から『中庭のベンチに座ってる』とメッセージが届いていた。『すぐに行きます』と返して急いで向かった。  俺が着くと、優しい笑顔で手を振り迎えてくれる。 「久しぶりだね」 「渚先輩が昼休みに俺たちのところに来てくれないからですよ」 「後輩とばかり遊んでらんないの。僕だってクラスに友達がいるし」  渚先輩が隣のスペースを叩くからそこに腰を落とした。 「みんなが心配して僕のところに来たよ。久志がずっと落ち込んでるって」 「……そうですか。分かってはいるんですけど、自分ではどうしようもできなくて。ずっと引きずっています」 「話したくなければ話さなくてもいいし、話したいなら聞くよ。話す相手は僕じゃなくてもいいし。いつもいるみんなも久志の話をちゃんと聞いてくれるよ」 「ありがとうございます。相手に迷惑を掛けたくないので、みんなにも言わないでくれると助かります」  渚先輩は分かった、と頷いてくれた。
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