好きです

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 なんで深月さんがいるんだろう。兄貴がどこかに連れていってくれるんじゃなかったのか? 昨日の兄貴との会話を思い返すと、出掛けるなと言われただけだった。楽しみにしてろ、とは深月さんのことだったのか。 「……あの、入りますか?」 「うん」  深月さんが小さく頷く。床にクッションを置いて、どうぞと促すとそこに座った。 「どうしてここに?」  深月さんが俺に会いにきた理由がわからない。年齢を偽っていたことで、別れが最悪だったから。 「合コンの時に幹事をした友達に千景さんと連絡を取ってもらって、久志くんと会いたいってお願いしたんだ。久志くんのことを忘れようと思ったから、僕は久志くんの連絡先を消しちゃって」  やっぱりすごく悲しませたよな。 「すみませんでした」 「ううん、年齢を偽っていた理由も久志くんが僕にそれを話そうとしていたことも千景さんから聞いた。久志くんは騙そうとしてたんじゃないって謝られた」  兄貴の意外な行動に目を見張る。 「僕は久志くんに本当に酷いことをした。別れるって言ったのは僕なのに、久志くんが落ち込んでいるのを見てホッとしてた。まだ僕のことが好きなんだって。久志くんと付き合うなんてできないくせに。でも、一週間くらいして久志くんが笑うようになった。久志くんの笑った顔が好きだったのに、不安でたまらなかった。すごく可愛い子と一緒にいて、……あの子と付き合ってるの?」  渚先輩と中庭で話した日のことだろうか。渚先輩は深月さんに喧嘩を売ったと言っていた。それで会いにきてくれたのか?  ブワッと顔に熱が集まる。弱々しい面持ちを見せる深月さんに鼓動は跳ねた。深月さんがまだ俺のことを好きなのではないかと期待して。 「渚先輩は仲の良い先輩ですよ。先輩にもそうはっきりと言われていますし」 「そうなんだ。……あの子が渚先輩なんだね。久志くんが告白のアドバイスを求めていた」  あからさまなホッとした表情に、俺は嬉しくてたまらなかった。 「俺が好きなのは深月さんです」  目を瞬かせた後、深月さんは視線を彷徨わせる。でも、とか、年齢が、とかボソボソと小さな声が聞こえた。
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