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「渚先輩に言われたんです。二年後は高校生じゃないって。深月さんが好きです。毎日好きだと伝えます。高校を卒業したら、返事をください」
「でもそんな先のことなんて分からないよ。久志くんはカッコいいし、周りの子が放っておかないでしょ」
「俺は深月さんが好きです。この歳になって初めて好きになった人なんです。そう簡単に気持ちが変わるなんてありません。もし深月さんに好きな人ができたとしても、……そう考えるだけですげー嫌だし自分で言ってかなり凹みますね。でも、また俺を好きになってもらえるように頑張ります」
深月さんは瞳に涙を浮かべ、微かに口角を上げる。深月さんに『好きです』とメッセージを送った。
「俺が好きで送るので返事はしなくてもいいですが、連絡先はまた登録して欲しいです」
「うん、分かった」
「教師になるんですよね? 勉強頑張ってくださいね」
「ありがとう。久志くんに応援してもらったんだから頑張れる!」
深月さんが立ち上がるから、俺も見送りに向かう。
「送ります」
「ううん、大丈夫だよ」
玄関の扉に手を掛けて深月さんが振り返る。
「僕のこと好きになってくれてありがとう」
久しぶりに深月さんの満面の笑みを見れた。俺も笑顔を向ける。
「ずっと好きです。二年後に返事をください」
「うん、分かった。……またね」
「はい、また」
手を振り深月さんが家を出ていく。またね、と言われた。深月さんと一緒にいられる未来の見込みがあるということだろうか。
それもこれも俺の努力次第だろうな。
リビングに行くと兄貴がソファで寛いでいて、俺に目を向けてふっと笑った。
「いいことあったのか?」
「毎日好きって伝えるから二年後に返事をくださいって言った」
「そうか」
「兄貴が深月さんに謝ってくれたんだってね。びっくりした」
兄貴はバツが悪そうに頭を掻く。
「言うなって口止めすればよかった。でも俺は久志が深月さんへの気持ちがなくなっていたら何もしてなかった。だからまだ好きなのか確認した。一週間くらい沈んでたけどそのあと普通だったし、それくらいで吹っ切れるなら長く続かないと思ったから」
「長く付き合ったことのない兄貴だから分かること?」
「うるせーよ! やっぱり生意気で可愛くねぇ!」
言葉とは裏腹に表情は穏やかだ。
「兄貴、深月さんと会わせてくれてありがとう」
「別に。元は俺が大学生って言えって言ったせいだし。出掛けてくる」
兄貴はスマホを確認すると家を出ていった。誰かと約束をしていたのだろう。それでも俺と深月さんが話終わるまで待っていた。思いがけず兄貴の優しさに触れた。
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