それから

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それから

 渚先輩には報告した。『毎日好きって言えばいい』とアドバイスもくれたし、二年後は高校生ではないと気付かせもしてくれたから。 「渚先輩のおかげです! ありがとうございます」 「久志の納得いく結果なら、僕が教育実習生に喧嘩売ったかいがあったよ。二年って結構長いけど頑張ってね」 「はい! 渚先輩も何かありましたら俺に言ってください。俺は渚先輩の味方になりますから」 「頼もしいね」  渚先輩が目を細める。 「なにかお礼をさせてください」 「じゃあたいやき食べたい。カスタードクリームの入ったやつ」 「そんなんでいいんですか? それならうちの最寄駅に美味しいたいやき屋があるのでうちで食べませんか?」 「いいね、楽しみ」  放課後に待ち合わせをしてたいやきを買う。渚先輩リクエストのカスタードクリームと俺の抹茶あん。食べるか分からないけれど、一応兄貴にも礼をするかと粒あんも買った。  リビングのソファに座って、渚先輩とたいやきを食べる。 「美味しい! カスタードクリームはもったり濃厚だし、皮もパリッとしていてほんのり甘くて」 「気に入ってもらえたようで良かったです」 「帰る時にも買っちゃお!」  顔を見合わせて笑っていると、リビングの扉が開き、兄貴が入ってくる。 「兄貴いたの?」 「寝てた。今からバイトだからすぐに出ていくけど」  兄貴が渚先輩を凝視する。ヤバい。渚先輩はめちゃくちゃ美人だ。兄貴に会わせてはいけない人。 「こんにちは、おじゃましています」  渚先輩が頭を下げると兄貴は我に返って渚先輩へ笑顔を向ける。 「ゆっくりしていってね」  バイトの時間だからか渚先輩を口説くことなくリビングを出ようとする。 「たいやきあるから帰ってきてから食べなよ」 「ああ、分かった」  振り返って返事をすると家を出て行った。  ホッと息を吐き出す。兄貴が渚先輩に迷惑をかけることはなかったから。 「ねぇ久志、久志は僕の味方になってくれるんだよね?」  目を輝かせて口の端を広げる渚先輩に嫌な予感しかしない。 「……味方でいたいけど、無理なこともあります」 「お兄さんすっごくカッコいいね! 紹介して」  嫌な予感的中。 「兄貴はやめた方がいいです。兄貴に渚先輩はもったいない!」  付き合っては別れを繰り返している兄貴だから、渚先輩が泣く未来しか見えない。渚先輩には絶対に幸せになってもらいたい。 「でも味方になってくれるって言ったじゃん」 「言いましたけど、兄貴は人と付き合うの向いてないんです」 「でも久志だってそうだったよ。誰とも付き合ったことないのに経験豊富でさ。そんな久志が一途になったんだよ。お兄さんが僕にそうなるとは限らないけど、僕の努力次第ではそうなるかもしれないじゃん」  確かに! としか思えなくて渋々頷いた。 「兄貴に渚先輩の連絡先を教えればいいですか?」 「よろしくね」
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