それから

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 兄貴が帰ってきてから渚先輩の連絡先を教えた。兄貴はものすごい勢いで食いついた。渚先輩のことをめちゃくちゃ見ていたから当然の反応だ。  俺たちみんなの渚先輩は、兄貴の渚先輩になってしまった。  すぐに渚先輩から兄貴のことで泣きつかれると思っていたけれど、兄貴の方が俺に小さなことで何度も相談しにくるようになった。  兄貴は驚くほど渚先輩を大切にしているらしい。渚先輩は兄貴を手のひらの上で転がしているようだった。さすが俺たちをかわし続けた高嶺の花。    俺は毎日深月さんに『好きです』と送り続けた。それに対しての返信はない。高校を卒業したら返事をもらう約束をしているからそれでいい。  たまに猫の写真が送られてくる。合コンの時に『猫が好き』と言ったからだと思うと胸のときめきを抑えられない。  深月さんから送られてくる猫の写真を入れているフォルダは何度も見返した。増えるたびに会える日が近付いている実感が湧く。  高校三年生の三月一日、卒業式を終えて深月さんに『卒業しました。会いたいです』と連絡をする。すぐに返事はこない。深月さんの働く高校も卒業式だと思い至る。忙しいのかもしれない。  友人と卒業祝いをして夜に帰宅する。スマホを見ると深月さんからメッセージが届いていた。 『卒業おめでとう。でも、三月いっぱいは高校生だよね。四月の最初の土曜日はどうかな?』  すぐに会えると思っていたのにあと一ヶ月待たなければいけない。脱力してベッドに突っ伏す。  二年近く待ったんだ。一ヶ月くらいいいじゃん! と言う気持ちとあと一ヶ月くらい我慢しようという気持ちで揺れる。  ここまで我慢したのだから、泣きたい気持ちを必死に抑えて『四月の土曜日、よろしくお願いします』と送った。その後すぐに『深月さんが好きです』と続ける。
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