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ドリンクが運ばれ、全員で乾杯する。俺はウーロン茶だけど、他のみんなは酒。深月さんは一口含んでグラスを置いた。
「大丈夫? みんなお酒飲んでるけど、苦手じゃない?」
深月さんが口元に手を添えて首を傾ける。計算だろうが計算じゃなかろうが、美人の可愛い仕草なんて好きに決まっている。しかも優しい。
「全然大丈夫ですよ。深月さんもたくさん飲んでください」
「ありがとう。でも本当はそんなに得意じゃないんだ。ゆっくり飲みきったら僕もウーロン茶を飲もうかな」
「好きなもの飲んで食べて楽しむのが一番ですよね!」
料理も運ばれて、食べながら楽しく会話する。ある程度食べると、席を移動しようという話が出た。
俺の左に深月さんが座る。
「僕が隣でもいい?」
「もちろんです。深月さんに隣に来てもらえて嬉しいです」
「よかった」
ほんのり頬を染めて目を細める。その頬の赤みは俺のせいなのか酒のせいなのか知りたい。
「久志くんの学部は?」
何も考えていなかった。兄貴たちを見ると、お目当ての人たちに夢中で俺の助けて欲しいという視線に気付いてくれない。フォローするとか合コンは団体戦だとかは何だったのだろうか。好みが分かれたとなると、全員個人戦に走りやがった。
「……えっと経営学部です」
兄貴の学部をとりあえず言っておく。深く突っ込まれたら答えられないから、深月さんに質問することに決めた。
「深月さんは何ですか?」
「僕は外国語学部の英語学科だよ」
英語を勉強しているのだろうことは分かった。やっぱり大学の話はやめよう。
「深月さんはお休みの日は何をして過ごしていますか?」
「僕は動物が好きだから、アニマルカフェに行ったり、ペットショップで眺めたり。動物園も大好きだよ」
「アニマルカフェって猫カフェとかってことですか? 俺、ネコめっちゃ好きです」
「可愛いよね」
「はい!」
深月さんも可愛いネコですけどね。
「今度一緒に行く?」
「いいんですか? 俺、初めて行くので楽しみです」
これは深月さんも俺のことを気に入ってくれているってことでいいよな。居酒屋の後も誘いやすい。
「久志くんはお休みの日は何してるの?」
「家だったりツレの家で集まってゲームしたり喋ったりしながら騒いでますね」
あまり金をかけずに楽しむとなると、誰かの家になってしまう。高校生には自由にできる金が少ない。
「楽しそうだね」
家にも遊びにきてください、と声をかけるタイミングかと思ったが、深月さんがちょっとごめんね、と立ちあがろうとする。
よろけるから身体を支えた。めちゃくちゃいい匂いがする。花束のような甘く優しい香り。
「大丈夫ですか?」
「うん、ありがとう。お手洗いに行こうと思ったんだけど、ちょっと飲みすぎちゃったかな?」
深月さんのグラスは空になっていた。乾杯からだいぶ時間をかけて一杯飲みきったらしい。
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