団体競技の心構え

1/2
前へ
/4ページ
次へ

団体競技の心構え

 昼休みに弁当を食べながら放課後の予定を相談していると、五つ上の兄貴からメッセージが届いた。兄貴からメッセージがくるなんて珍しい。 『授業が終わったらすぐに帰ってこい』 『何で? 何かあった?』  気になってすぐに返信したけれど、既読になるだけで何も返ってこない。家で話すと言うことだろう。 「わりぃ、俺は今日パス」 「マジかよ。久志こねぇのかよ」  さっきまで乗り気だったのに断ったから、周りからブーイングの嵐。わるい、とまた謝れば、みんなは再び放課後の予定を相談し始めた。 「ただいま」  玄関の扉を開けて声をかければ、二階から兄貴が飛び降りる勢いで駆けてきた。 「帰ってくるのおせーんだよ!」 「いつもより早いだろ。授業終わったらまっすぐ帰ってきたんだから」 「久志がいつも何時に帰ってくるかなんて知らねーよ」  就職先が決まっているから、兄貴は大学とバイト以外は遊び回っていて、家には寝に帰るくらいだ。夕方にいるのは珍しい。 「それで? 何で早く帰ってこいって言ったの?」 「とりあえずついて来い」  兄貴の部屋に入る。部屋には眼鏡をかけた真面目そうなイケメンと、アイドルのような正統派な美形が床であぐらを描いていた。  どうも、と頭を下げると、兄貴に座れと肩を下に押されてその場に腰を下ろす。兄貴はベッドに腰掛けた。六畳もない部屋に男四人は圧迫感がある。 「そろそろ教えてよ。俺に早く帰って来いって言った理由」  兄貴が前のめりになって口を開いた。 「久志、合コンに連れてってやる。相手は全員大学四年生。俺と同じ歳だ。お前の大好きな年上美人ばかりだぞ」  大学四年生ってことは五つ上の美人ってことか。テンション上がるけど、こんな美味い話に裏がないわけがない。 「何で俺を連れてってくれるの?」 「本当は別のやつが来る予定だったんだよ。なのに今日の朝『彼氏ができたから無理』とか言いやがって。『顔のいいタチだけを連れていく』って言っちまったし、そんなやつすぐに見つかるわけないから仕方なく久志を連れていくだけだ」  兄貴が幹事らしい。兄貴もここにいる二人も顔が整っている。  急遽の人数合わせなら、疑ったような裏もなく楽しめそうだ。 「俺は裕太。よろしくね」 「僕は秀明。よろしく」  正統派美形が裕太さんで、真面目そうなイケメンが秀明さんか。 「千景の弟の久志です。よろしくお願いします。年上美人が大好きなので、全員俺がお持ち帰りしますね!」  裕太さんと秀明さんは目を丸くしてポカンとした表情で固まる。兄貴は頭を押さえて大きなため息を吐いた。 「めっちゃ生意気じゃん!」  裕太さんが声を立てて笑う。 「見た目は爽やか好青年なのに。中身は兄と一緒か」  秀明さんが苦笑した。いかつい兄貴と一緒にはされたくない。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加