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他者の侵入を許さないこの閉鎖的な空間で、無防備に眠る彼女の寝顔を見つめる。
---今日は生徒会の業務などないのに。真面目な彼女は掃除だ換気だと言って、几帳面にもこの生徒会室に来てくれる。そしてそんな彼女の性質を知っている自分は、彼女の存在を期待してこの部屋へと足を運んでしまうのだ。
ガチャリ、部屋の鍵を閉める音が鳴り響く。
まだ、彼女は目を覚さない。推測では後数時間くらいは眠ってくれるだろう。
純粋に俺の名前を紡ぐ唇も、真っ直ぐに濁りのない視線で見つめてくれる瞳も。近づけば花のように柔らかい香りがする髪も。全てが愛おしくて堪らない。
こんな風に俺が思っていることなど、菫さんは知りもしないだろう。知ってもらうのは、今じゃない。
少し力を込めてしまえば、簡単に息の根を止められそうな細い首。痛みを与えないように、そっと掌で覆った。
---こんなことをする必要も、今はないというのに。
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