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「どうして、こんなことするの…?」
私に向けられていた愛情は、ずっと優しいものだった。彼に向けられる愛情が、すべて愛おしくて。
ずっとずっと、幸せな毎日が続くと思っていたのに。
「菫を俺のモノにするためだよ」
「そんなの、私は、とっくに、」
「“既成事実”さえ作れば、菫と一生一緒に居られるでしょう?」
---その言葉に、目眩がする。藍璃くんが、怖い。怖くて堪らない。
今度は正面から、続け様に抱き射抜かれる。藍璃くんは、本気だ。
本気で、“既成事実”を作ろうとしているんだ。
私を、逃がさない為に。
「可哀想に。…お兄ちゃん達の忠告を聞いていれば、こんなことにはならなかったのにね?」
「どういう、こと…?」
「散々牽制されなかった?夏目美那と、宝生環に」
どうして、藍璃くんは。お兄ちゃんの名前だけではなく美那さんの名前までも知っているのだろう。
「それでも俺に上手く手出しできなくて、最終的にしたことが何だと思う?」
「…?」
「菫の手首に付いていた時計。あんなもの、今まで付けていなかったでしょ」
今日、もらったばかりの時計。肌身離さず付けているように、念押しされて。それから、今日は本当は、2人と過ごすはずだった。
「---GPSなんて小賢しいことするよね?」
「GPS?」
「菫、気づいていなかったの?アレ、発信機つきの時計だったんだよ」
いつのまにか外されていた時計は、藍璃くんが持っていて。それをなんの躊躇もなく床に落として、足で踏みつけた。
「---純粋なお兄さん達だね。こんなモノで俺達の居場所を探ろうだなんて」
「…ぁ、ッ、」
「壊さなくても居場所なんてわからせるつもりはなかったけど。ごめんね?他の男からもらったものなんてゴミ屑にしかならないから」
---息が、上手くできない。言葉すら出て来ずに、涙が溢れる。
私の涙さえ、恭しく掬い取るように舐めて拭った藍璃くんは妖艶に微笑んだ。
「一生、俺の側にいてね」
逃れられない。そんな術も、思考も、遮られて熱を送り続けられる。
「誰にも、邪魔なんてさせてやらない」
何度も何度も、直接腰を穿たれて。それから、熱い欲情を注がれた。
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