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自分の支配下に、彼女の身体を組み敷いて。ギシリ、ベッドのスプリングが軋む音がする。
宝生菫。ふわふわで少し癖のあるミディアムロング。華美なメイクはしていないけれど、そんなものは不要な程に整えられたパーツ。ふっくらとした頬と唇。
おそらく彼女は、俺のことを嫌ってはいない。掃除を始めるのはいつも俺が使用しているデスク周りからであるし、同学年親しくしている異性は知る限りでは俺だけだろう。
だけど、それ以上の感情が見えてこない。わからない。
少なくとも好意的であればいいのだけれど。
そんな邪な考えを持ちながら、彼女の唇にそっと自分の唇を重ねる。一度触れて終わりにしようと思っていたのに、その糖度が甘すぎて何度も求めた。静かな空間に、リップ音を散りばめていく。
「…ん、」
ーー起きる気配はない。
だから今度はその固く閉じた隙間をこじ開けるように、そっと舌を入れる。
何て一方通行で、歪な“恋愛”感情なのだろう。だけれど本当は、そんなに綺麗な名前じゃないのかもしれない。
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