レイヴン

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言い当てられてどきりと胸が鳴った。エリーも驚いて顔をこわばらせている。 たしかにレイヴンは毛の生えた動物とは違った匂いがするけれど、その匂いを知っているということは――。 「懐かしいねぇ、私の友達も同じ匂いがしたよ」 『友達』と聞いてなおさら驚いた。 「おばあさん、龍を飼っていたんですか?」 ぼくが尋ねると、サダラばあちゃんはとたんに不機嫌になった。 「飼っているなんて言っちゃいけないよ。龍は人間よりよっぽど賢いからのう」 怒られたと思い黙ると、かわりにエリーがやんわりと尋ねる。 「どうして人間は、龍と仲良くできないんでしょうか……」 すると、サダラばあちゃんはしばらく考えてから重々しく口を開いた。 「もう50年前のことじゃが――とある王国の王が龍の鱗で作った鎧をたいそう気に入ったらしいのじゃ。それで龍の鱗の価値は跳ね上がり、龍が狙われたのじゃ」 「聞いたことがあります。でも、当時は龍の討伐は禁止されていたはずです」 「じゃが、龍の討伐を正当化する理由がひとつだけあったじゃろう?」 たしかに過去には、『人間に危害を加えた場合は、迷わず退治してよい』という勅令があった。 「人間は龍の卵を盗むことで龍を怒らせ、討伐する理由をこしらえていたんじゃ」 「まさか!?」 聞いて背筋が冷たくなった。 「龍は怒らせさえしなければ、危害など加えるはずはないのに……」 そう言ってばあちゃんは背中を丸めて肩を震わせた。 ばあちゃんの話が本当なら、ぼくが魔法学校で習っていた龍による被害は、人間の都合で歪曲された事実だということになる。 エリーは泣きそうな顔で尋ねる。 「じゃあ、ばあちゃんの友達だった龍は……?」 「私が留守の間に、誰かに攫われてしまったんじゃ……」 ばあちゃんの(めし)いた目には涙が浮かんでいた。 「おまえたちも、その子のことを思うなら早く森に放してやり」 聞いたエリーは、うんと小さな声で返事をしたものの、しょんぼりとしてレイヴンを抱きしめていた。 レイヴンはそんなエリーの表情を見上げて、不思議そうな顔で「キュー」とひと鳴きした。
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