クールな彼女

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レイは銃弾を器用に回避すると、臆することなく男達の懐に入り込み、目にも留まらぬ速さで気絶させていく。それは彼女の顔を確認する隙さえ与えないほどの凄まじいスピードだった。 振り上げた足で銃を弾き飛ばし、弱点である顎を打ち、肘でこめかみを鋭く叩く。痛みで頭を押さえて蹲る男の背中にもう一人の男の巨体を背負い投げして叩きつけると、更に腕を掴んで関節技をきめた。悲鳴をあげた男はピクリとも動かなくなる。 体重差だってあるのに、なんて軽々と動くのだろう。相手の動きが分かっているかのように機敏で、一切の無駄がなく、ひとつひとつの動作が綺麗だ。 想像以上の強さと見惚れるほどの所作に、興奮のあまり、未だ嘗てないほどに胸が熱くなった。   「レ、レイ!怪我は……あるわけないですよね」 私の前に戻ってきたレイに声を掛けるけれど、驚くべきことに一切息が乱れていない。肺バグってんのかな。 「あの……すみません」 そして何事もなかったかのように歩きだそうとするレイについて行こうとした時、遠慮がちな声に呼びとめられた。 そこにいたのは、さっき連れて行かれそうになっていた女の子。遠目だと分からなかったけれど、近くで見てみると思っていたよりもずっと幼かった。 その子は私とレイを交互に見上げて、ゴクンと喉を鳴らす。たった今あんな目に遭い、かと思えばそいつらを秒殺してしまったレイが何者なのか分からなくて怯えている。 そんな彼女を安心させるようにしゃがみ込んだ。
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