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「ねぇ。なんでアイツらに連れて行かれそうになってたの?」
「……パパが借金してて、ずっと前にどこか行っちゃった」
「なるほど。それで、ママは?」
「ママは、病気」
「……」
「ずっと入院してたんだけど、お金払えなくて、おうち帰ってきた。でもおうちにはさっきの人達がくるし、家賃も払えなくて、出てってくれって言われてる」
「……他に家族は?」
「いない。きっとママもこのままだといなくなる」
「いなくなる?」
「死んじゃうの。ずっと寝たっきりでゴホゴホしてる」
私の質問に答える女の子は冷静で、子供らしからぬ態度だ。
つまり、父親が借金を作って蒸発。母親がこの子を育てていたけれど重い病気になり、お金もないし、借金とりに追われるし、助けてくれる身内もいない。そこでさっきの連中は女の子を連れて行き、恐らく身体を捌いて金にするつもりだったのだろう。身の毛もよだつ話だ。
だからといって、私に何が――
「いくら?」
「……へ?」
「借金。いくらあるの」
急に私達の間に入ってきたのは、ずっと静かだったレイだ。キョトンと目を丸くしながら見上げれば、レイの双眸は女の子に向いている。
だけど女の子は詳しいことは分からないのか、ふるふると首を横に振った。
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