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するとレイは女の子から目を逸らすと、さっきぶっ飛ばした男達の元へと歩いていく。
その内の一人の前に座ると、そいつのスーツのポケットをまさぐって"何か"を取り出す。カチッと音がしたことで、それがライターだと分かった。
一体どうする気なのか。不思議に思った直後、レイは信じられない行動にでた。
「…っ、アッツ!は!?熱っ!!!」
「あの子の父親の借金いくら?」
「…ひっ、」
「いくら?」
火で肌を炙られた男はすぐに意識を取り戻したものの、目の前にいるレイに怯えたような声を漏らす。しかしレイが早く言えと言わんばかりにもう一度ライターを近付けると、焦ったように口を開いた。
「一千万だよ、一千万っ!おい、近付けんな!」
恐怖で顔を引きつらせる男とは反対に、レイは一切表情を変えない。かと思いきや、いつの間にか横に置いてあった黒いバッグを手に持つと、それを男に向かって投げて寄越した。
「……は?何っ、」
「一千万入ってる」
「……」
「それであの子の借金は清算して」
レイの要求に男は大きく目を見開く。そして勢いよくチャックを開けて中身を確認すると、益々目を丸くしてレイを凝視した。
「その代わり、もうあの子と母親を追いかけ回すのはやめること」
「……ああ、分かった」
「もし約束を守らなかったら、次はあんた自身を油まみれにして火をつける」
その脅迫は、まるで脅す気がないかのような静かな声音だ。しかしレイならやり兼ねないと感じたのか、効果は覿面だった。
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