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「これ」
「……え?」
「それ持ってお母さんと島を出なよ」
私達のそばに戻ってきたレイは、今度は女の子に別のバッグを渡す。
不思議そうにカバンを開ける女の子の横から私も中を覗き込むと、そこにはぎっしりと札束が詰まっていて、ぎょっと目を見開いた。
「レ、レイ!?これはさすがにっ…」
さすがにこれは世話を焼き過ぎなんじゃないかと言おうとしたものの、レイが唇に人差し指を当ててジェスチャーをしてきたので、大人しく口を結ぶ。っていうかシーッの仕草すら可愛すぎるんですけど。女神ですか。
「え…これ、いいの?」
「お母さん、歩ける?」
「ううん。車椅子がないと動けない」
「車椅子はある?」
「あるよ。置いてある」
「じゃあ、まず家に帰ったらお母さんを車椅子に乗せて家を出ること。極力誰にも見られないように」
「え?家を出るの?」
「そう。それでどこかのホテルに泊まって朝まで過ごしたら、フェリーに乗って島を出るの。で、脱出成功したらこの名刺に書いてある病院に行って。ここの病院、お金さえあれば必ず治療してくれて、深い事情も掘り下げないの。あなたみたいな子供が大金を抱えていたって何も尋ねてこない」
「……」
「大体ここからだと丸二日は掛かるかな」
「ちょ、ちょっと待ってください。丸二日って、この子まだこんなに小さいんですよ?」
思わず割って入れば、レイと女の子の視線が同時に私に向いた。
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