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「レイってクールですね…」
「さっきの質問の答えだけど」
「そして脈絡がない」
「なんでヤエのことを選んだのかというと…」
「選んだのかというと?」
「同年代の女子がヤエしかいなかったから」
「……そ、うですか」
「あと、今みたいなところ」
「はい?」
「誰かのために感情を動かせる」
「……」
「ヤエにはちゃんと人間らしいところがあって、それは私が忘れそうになっているものだから。ヤエと一緒にいたら、私も人間らしくなれるんじゃないかなって」
「人間らしく…」
レイは歩くペースを私に合わせながら言葉を紡ぐ。
同年代だからと言われた時はそりゃそうだよなと思ったものの、続けてレイが口にした理由に、私の心はチクリと痛んだ。
その横顔を盗み見れば、相変わらず彼女の表情は一ミリも動かない。この僅か数日で分かったことは、どんなにレイの心を読み取ろうとしても絶対に無理だということだ。
だけど不思議なことに、今だけはその胸の内が分かる気がした。
だってその言い方だとまるで、自身には感情がないのだと言っているみたいで。それにいつも無機質な声が、寂しげに揺れていたように聞こえた。
そこでふと、さっきレイが私に向けた問いかけの意味を閃いた。『怖い?』というのは、きっとレイ自身についてだ。
確かにレイは組織内でも頂点に立つ女性であり、もちろん色んな意味で恐れられている。冷酷とも言われているし、平気で人を不幸に陥れることが出来る悪魔だとも。
だけどたった今女の子を救った彼女は、私の目にはそうは見えなかった。
中途半端に優しくするくらいなら見捨てるべきだと言ったけれど、迷うことなく女の子に手を差し伸べたのは、他でもなくレイじゃないか。
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