学校へ行こう

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私達に用意されたのは街の外れにある一軒家。建物自体は比較的に新しくて二人で住むにはかなり贅沢な広さだ。 リビングには既に家具が一式置いてあり、必要な日用品などもきっちりと揃った状態で棚にしまわれていた。二階には私とヤエの個々の部屋の他に二部屋あって、一番奥にはモニタールームが完備されている。 今回与えられた任務を全うするまでどれだけの期間を要するのかは分からないけれど、恐らく長期戦になるだろう。その間、ここが私とヤエの住処だ。 「魚に味噌汁に玉子にご飯にお漬物……毎朝毎朝贅沢な朝食ですねぇ。なんだか申し訳ないです」 「そう思うなら早起きしなよ」 「しかも毎日お魚の種類が違うのも贅沢ですよね」 「海に囲まれてるからね。色んな魚が獲り放題」 「なるほど。……ん?獲り放題?」 「獲れたてのほうが活きもいいしね」 ご飯と味噌汁を器によそい、テーブルに運ぶ。椅子に座って箸を持ったところで、いつまでも座ろうとしないヤエを見上げた。 「食べないの?」 「え、あの……もしかしてこれはレイが直々にゲットしたお魚ですか?」 「うん。潜って銛で突いて獲った」 「なんだって?」 「これだけ自然が豊かだったら自給自足で生きていけるよ」 「自給自足って……無人島生活じゃあるまいし」 「無人島だったらナイフがあれば生きていけるよね」 「そんな……まるで無人島で生きたことがあるみたいな」 「あるよ。半年間くらいだけど」 「ターザンかな?」 「組織に入ってすぐの時に、ナイフだけ渡されて無人島に放り込まれたんだよね」 「え?」 「毒蛇とか毒蜘蛛とかがうじゃうじゃいるし、逃げようにも海には鮫がいたから逃げられなかったけど、まぁでも人間って意外と適応出来るんだよね。毒蜘蛛も毒を抜けば食」 「やめて!それ以上レイの口から聞きたくない!」 大きな声を出しながら両耳を押さえるヤエを無視して、両手を合わせてご飯を食べ始める。 今では思い出話だけど、当時を振り返るだけで鳥肌が立つ。あれは結構な衝撃で、なにか説明があるならまだしも……いや説明があってもおかしな話だけど。 いきなり船から降ろされてバタフライナイフを一本だけ渡された時にはもう、サバイバル生活は始まっていた。あの頃はまだ八歳だったっけ。 後から聞いた話だと、大抵の場合はそこで命を落とすらしい。 あの時何故だかやけに冷静だった私は、思いのほか適応能力に優れていたみたいだ。何日か経てば、普通に食物を獲り、火の起こし方だって学んでいた。 「そんな私についたのが、"美女の皮を被ったゴリラ"というなんとも微妙なニックネームだった。褒めてんのか貶してんのかどっちだよって感じじゃない?」 「明らかに貶してますけど、正直私も納得です。レイって見た目は清楚な美女なのに、中身は意外とゴリラですもん」 「……」 鼻にバナナを突っ込まれて喜んでたやつには絶対に言われたくない。
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