学校へ行こう

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「それで今日から学校に通うんだけど」 食事を終えてヤエのいれてくれた紅茶を飲みながらミーティングタイム。 するとヤエは「おっ!まってました!」と、目を輝かせた。 「あのね、分かってる?遊びに行くわけじゃ……ま、いいや。まず私達は、恐らくこの街を拠点として活動している組織のDahlia(ダリア)を見つけだす」 Dahliaとは、Roarと同じく何でも屋。 ただRoarと全く違うところは、殺し、ドラッグ、人身売買等の非合法な部分には手を出さず、尚且つ反社会勢力にも一切手を貸さないということ。 そのDahliaがRoarに対立してきたのは五年程前からだった。例えばRoarが非合法な依頼を受けると、どこからかその情報を入手して、ことごとく邪魔をしてくるのだ。 そこで今回の任務で私とヤエが敵の本拠地に送り込まれた。更にRoarが調べた情報によると、この島の中心にある"椿原学園"という高校がかなり怪しいらしい。 というのも、Roarがこの島の様々な機関にハッキングをかけようと動いたものの、唯一セキュリティを突破することが出来なかったのだ。たかだか一介の高校がそれほどまでのセキュリティ力を保持していることは怪しむべき要素である。 そのために私達はまずはこの街の住人となり、椿原学園に通って一般人を装いつつDahliaについて突き詰めていく必要があった。 「ということで、まずは潜入するにあたり、この変装用のウィッグと眼鏡をつけて学校に行きます」 そう言って用意しておいた紙袋の中からそのアイテムを取りだして、ヤエに差し出す。 するとそれを受け取った彼女の表情は、みるみるうちに歪んでいった。 「な、なんですかこれは?」 「だから変装用のウィッグと眼鏡だってば」 ヤエが持っているのはおかっぱ頭のウィッグだ。ちなみに私はおさげ頭。どちらもセンスのセの字も感じさせない代物だった。 「こ、こんなのつけてどうやって青春の思い出を作るんですか!」 「青春の思い出とは」 「え。そりゃあ素敵な殿方と授業をサボって屋上でお互いの肉体を探り合って」 「君が探らなきゃならないのはDahliaでしょうが」 「オプション!オプションくらい付けてもいいのではないでしょうか!」 「オプションとは」 「素敵な殿方と保健室で乳繰り合うとか」 「君はなんで裏社会にいるのかな?」 「真剣に存在を否定しないでください」 頬杖をつきながら呆れたように突っ込めば、ヤエはしょぼんと肩を落とす。ほんと天真爛漫というか、能天気というか。 「ま、せっかくだし少しくらい楽しもっか。変装しながらね」 「……はーい」 こうして私達は、人生初の学校生活とやらを送ることになった。
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