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クールな彼女
ゆらゆらと体が心地良く揺れて、気が付けば夢の中にいた。トン、と肩を叩かれてゆっくりと目を開くと、「降りるよ」と声を掛けられる。
「え?あれ?……あ、待ってください!」
キョロキョロと辺りを見渡すと、さっきまで明るかった空が暗く沈んでいる。私を置いて先に歩いて行ってしまう彼女の背中を慌てて追いかけた。
「す、すみません!荷物お持ちします!」
彼女の横に並んで、持たせてしまっている自分の荷物を受け取る。ついでに彼女の分まで持とうとしたけれど、「大丈夫」と断られた。いつもだったらこういう時は下っ端の私が二人分の荷物を運ばなければならないのに。
「あの、すみません。私ばっかり寝てしまって」
「いいよ、別に」
「だけどレイは全然寝てないじゃないですか…」
「ううん、少し寝たよ」
申し訳なくて頭を下げる私に見向きもせずに、レイは早足で歩いていく。
レイはそう言うけれど、実際に彼女が睡眠を取っているところは見たことがない。優に三日間は一緒にいるのに、ただの一度もだ。夜中もPCを触って何やら仕事をしているし、乗り物に乗っている時は外の景色を眺めている。それはまるで、常に神経を研ぎ澄ませているかのように。
「それにしても、本当にフェリーでしか島に入る手段がないんですね。目的地ってここですか?」
「この隣り街」
組織を出てから何度も乗り物を乗り継ぎ、長い距離をひたすら歩いて、ようやくここまで辿り着いた。
今言った通り、この島には船でしか上陸手段がなくてなかなか不便な場所だ。だけど島自体は大きくて、人口もそこそこ多いのだという。
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