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レイは初めて訪れた土地であるにも関わらずに、地図などを確認することもなくスタスタと歩いていく。小走りでついて行きながらも、「あのー…」と声をかけた。
「ずっと不思議だったんですけど、道順とかって把握しているんですか?一応私地図とか乗り換える駅とかメモしてるんですけど、まったく必要ないですか?」
「うん。覚えてるから」
「覚えてる?っていうのは、目的地まですべて?」
「いちいち確認するの面倒くさいから」
「面倒くさい…」
淡々と答えるレイを見つめて、ぽかんと口を開く。そんな理由でこれまでの長い距離も、ここからの道のりも、すべて頭の中に入っているというのか。
そもそも本来であれば、サポート役の私がレイを目的地まで連れて行かなければならないのに。この様子だと、私なんて要らなかったんじゃないか。いや、でも、彼女と私が釣り合わないことなんて初めから分かり切っていた。
だからこそ、ずっと腑に落ちないことがあった。
「あ、あのっ!なぜ私なのでしょうか!」
唐突にその疑問をぶつければ、レイの歩みが少しだけ遅くなる。私を一瞥する顔は相変わらず微塵も動かなくて、何を考えているのかちっとも読めなかった。
「なぜって、何が?」
「あ、えっと……なぜ今回の任務の同行に私が選ばれたのかなという疑問です」
言葉を言い替えて繰り返すと、レイは今度は足を止めて、じっと私を見下ろしてきた。
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