クールな彼女

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その直後、ポン、と肩を叩かれて、「へ?」と間抜けな声が出る。そして振り返るよりも早く、何かが目の前を駆け抜けていった。 「え……レイ!?」 それが彼女なのだと気が付いて慌てて声を掛けたけれど、その足が止まることはない。いつの間にか目深に被っているフードは、恐らく少しでも顔が分からないようにするためのものだろう。 レイの走る先には先ほどの男達がいる。一体どうするつもりなのか、ひやりと嫌な汗が背中を伝った。 だって明らかにその男達はヤバい人種だ。借金の返済のために、平気で幼い女の子を連れ去ろうとするような非道なヤクザ。 「あ?なんだテメェは!」 すると案の定、レイの存在を確認した彼らは、ジャッケットの内ポケットから拳銃(チャカ)を取り出した。 それなのにレイは進むのをやめない。その様子に男達は戸惑いを見せたものの、すぐに敵だとみなした。 銃口をレイに向けて狙いを定める。咄嗟に「危ないっ!」と叫んだ。 ――しかし、そんな私の心配は杞憂だった。 「すごい…」 目の前に広がる光景にただただ呆気に取られ、感嘆の吐息を零す。 それほどまでに、レイの動きは私の想像を遥かに絶した。
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