118人が本棚に入れています
本棚に追加
海
2月。
人気のない夜明けの海岸に佇む。
濃紺だった空は、水平線の彼方から徐々に明るくなっていく。
その景色だけが私の視界を占領していた。
ザザー・・・
潮騒が耳に心地いい。
足元を寄せては返していく白波。
真冬の冷たい海風が、何も纏っていない手足を容赦なく冷やしていく。
薄汚れた白いワンピースだけが私の身体を包んでいた。
白い息。
頬に張り付く髪を指で払う。
目を瞑り、私は過去を思い出していた――。
最初のコメントを投稿しよう!