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2月。 人気のない夜明けの海岸に佇む。 濃紺だった空は、水平線の彼方から徐々に明るくなっていく。 その景色だけが私の視界を占領していた。 ザザー・・・ 潮騒が耳に心地いい。 足元を寄せては返していく白波。 真冬の冷たい海風が、何も纏っていない手足を容赦なく冷やしていく。 薄汚れた白いワンピースだけが私の身体を包んでいた。 白い息。 頬に張り付く髪を指で払う。 目を瞑り、私は過去を思い出していた――。
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