追っ手

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動くこともできないし、そんなことを考えつつしばらく見つめていると、むずむずと瞼が動いてどうやらお目覚めしてくれたらしい。 「・・悪い、重かっただろ」 「ううん大丈夫」 一瞬この状況に戸惑ったあと身体がパッと離れた。 重さと温かさがなくなって、少し名残惜しさを感じる冬の朝。 「おはよう。よく眠れたか?」 寝起きから身体が軽いらしい凪さんは立ち上がると、真っ黒のカーテンをシャッと引いた。 途端に差し込む朝日に目を細める。 「おはようございます。うん、よく寝た。 あの・・昨日寝ちゃったみたいですみません」 ベッドに正座して頭を下げる。 「ありがとう」 「・・・・?」 「すみませんじゃなくて、こういう時はありがとうと言うんだ」 ー・・あっそうだった!謝るんじゃなくてお礼を言う。 教えてもらったことだった。 「・・運んでくれてありがとう」 「あぁ」 クッと口角が上がる凪さんに少しドキッとする。
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