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「哀しみ」
「なんでなの、愛咲、なんで」
ユリが苦悶の表情に涙を浮かべ胸に
刺さった包丁を握る。
黒いフードを被った愛咲は言う。
「だって、退屈だったんだもの」
その途端、ユリの胸が青く光り
それが体に入ると涙が頬を伝った。
勢いよく起き上がり肩で息をする。
震えが止まらない。
あたしとユリは会ったことがある?
知らない記憶、いや忘れていた記憶が
顔を覗かせる。
ユリと愛咲が笑い合っている記憶。
まさか、私はユリを殺したの?
そんなわけない。
でも、もしユリを殺していたら……。
怖くて布団を被る。
悲しみから派生したのは恐ろしいという
感情だった。
どうして、殺人なんてしてしまったのだろう。
今更罪を後悔しても遅い。
愛咲は既に沢山の命を奪っているのだから。
「ごめんなさい。……ごめんなさい」
あぁ。この感情は後悔だ。
チクチクした気持ちは後悔だったのだ。
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