殺人鬼と流れ星

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殺人鬼と流れ星

20XX年、世を震撼させた連続殺人鬼 黒木愛咲(あいさ)が捕まった。 「なんで、人を殺したぐらいで罪になるの?」 取り調べの際に愛咲は気味の悪い笑顔を浮かべ 目の前の刑事に問うた。 刑事はコイツは正真正銘のサイコパスだと 目の前の殺人鬼に恐ろしさを覚えたという。 愛咲は両親からも愛されたことがない。 なのに、名前に「愛」がつくなんて皮肉なことだ。 もし、愛咲が両親から愛されていたのなら 彼女が殺人を犯すこともなかったのかもしれない。 だが、もう遅すぎた。 死刑が言い渡された夜 愛咲は四角く切り取られた格子付きの窓から 夜空を見上げていた。 星々が煌めいて、とても美しい。 多くの人々がそんな感情を抱くだろうが 愛咲は何の感情も持てない。 愛咲は感情が欠けていた。 人を殺しても殺しても何の感情を持てなかった。 だから、こんな毎日がつまらなくて わざと捕まった。 「綺麗」 だなんて思ってもみないことを口にしてみる。 けれど、何の感情も湧き上がらない。 そのとき、夜空を光が横切った。 流れ星だと気づくのに時間はかからなかった。 流れ星は次々と夜空を駆け巡り、 ひときわ大きく銀色に煌めく流れ星が こちらに向かってくる。 流れ星は次第に大きくなっていく。 近づいてきているのだ。 格子を突き破るかと思うが銀色の光は 一瞬のうちに愛咲の目の前にいた。 「え……」 目の前に立っていたのは美しい女性であった。 銀色の波打つ髪を炎のように揺らめかせ 慈愛に満ちた優しい紫の瞳を縁取る豊かなまつ毛。 肌は雪のように白く薔薇色の唇が目立っていた。 キラキラと輝く粉がまぶしてあるかのような銀色の マーメイドラインのドレスは 彼女によく似合っていた。 「こんばんは。黒木愛咲さん」 星の化身のような美女は優雅に微笑んだ。
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