二人の距離

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里山公園は、沢山の花見客で溢れ返っていた。 「あ、きたきた。麗さんこっちー!」 「あー!皐月おにーちゃん!」 きゃー!と叫びながらゆづは勢いよく駆け出して、手を振る皐月の元に一直線。そのまま抱っこされて嬉しそうに両手をバタつかせた。 ここ最近気付いたのは、どうやらゆづは王子様みたいなイケメンがタイプだということ。 公園内にある大きくて立派な桜の木の下を陣取っている集団は久々の顔ぶれだった。 皐月と彩綾、斗真とヤエ、私と侑生、それからゆき。 それぞれの子供達と、施設の子供達。 遠足がてらのお花見は、毎年この季節に行われている行事だった。 「なんですかねぇ…この豪華な顔ぶれ」 ちゃっかり侑生と煌生の間に座っているゆきは、全員の顔を見渡して、ほぅ、と吐息を零す。 「っていうか私が彼氏できないのって絶対にイケメンの見過ぎだと思うんですよ!だって俺様美青年にハーフ系美青年にゆるふわ系美青年に、いつか私と結婚するはずの超美少年×2!!」 「しませんよ」 「はぅ!煌生くんのサラッとしたその顔が好き!じゃあ蓮くん!」 「それまでゆきさんが待ってくれるなら」 「完璧な返し!水嶋ヒ◯に弄ばれるのも悪くない!」 「ゆき、お前酒飲みすぎ」 「うっ!侑生さんの私を心配する声も好き!でも一口も飲んでないです」 相変わらず羽山親子プラス蓮にベタ惚れなゆきは、いつもよりも何倍も騒がしい。
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