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「では、とりあえず乾杯しますか?」
皐月の仕切る声に全員が紙コップを持つ。隣のブルーシートに座る子供達はとっくにジュースを飲んで各々で騒いでいたけど、それも仕方ない。
桜の淡い桃色で覆われた空間は、子供だけじゃなくて大人までワクワクとさせるから不思議だ。
「ねぇ、こーき。ちょっと来て」
乾杯を済ませた後煌生の近くにやってきたハルが、ちょいちょいっと手招きをする。
その仕草があまりにも可愛くて、案の定口元を緩ませた煌生に、それを見ていたゆきがいきなり食ってかかった。
「ちょっとハルちゃん!今日は私が煌生くんの隣を、」
「あ、そっか。ごめんね、ゆきちゃん」
身を乗り出して訴えるゆきに対して、ハルはあっさりと身を引く。
そんな淡白なハルに煌生は唖然として、ゆきはガクリと項垂れた。残念ながら今のはどう見たってゆきの完敗だ。
「おい、待てよハル」
そして当たり前のようにハルを追い掛ける煌生に益々泣きべそをかいたゆきは、スススッと侑生の方に身を寄せてやっぱり鬱陶しがられた。
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