二人の距離

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煌生の後ろに隠れているハルはどうすればいいのか分からないのか、じっと動かずに地面を見つめている。 「侑生…やっぱり、」 居ても立っても居られなくて立ち上がった矢先、聞こえてきたのは聞き捨てならない台詞だった。 「こんな変人と一緒にいるってことは、お前もこいつと同類だな」 「ハルは変人じゃねぇよ」 「緑の瞳なんて、何かの病気じゃないのか?」 「…てめぇっ!」 その暴言にカッとなった煌生は、男の子の胸倉を掴んで強く引き寄せる。そして、反対の手を大きく振り上げた。 いいぞ!いけ!ぶちかませ!と心の中で叫んだ私は、興奮のあまり前のめりになる。すると、そんな私の視界に映ったのは、不思議な動きをするハルの姿だった。 ハルはくるりと踵を返すと、煌生に背中を向けてスタスタと歩きだす。 気が付いた煌生が「ハル?」と呼ぶけれど、ハルは足を止めることなく――男の子達から二十メートルくらい離れた場所に立ち止まると、再び体ごと振り返った。 一体どうしたというのか……私達大人陣も一斉に首を傾げる。 するとハルは予想もしていなかった行動に出た。 勢いよく駆け出したハルは煌生と男の子に向かって行き、驚いた煌生はサッと身をどかす。 そして地面を強い力で蹴り上げてジャンプすると、暴言を吐いた男の子にこれでもかというくらいの渾身の飛び蹴りをお見舞いしたのだ。 ドカっと衝撃音がして、男の子は勢いよく地面に倒れこむ。 彼とは反対にスタッと華麗に地面に着地してみせたハルは、仰向けに寝っ転がったまま目をパチクリとさせている男の子を見下ろして……その天使のように愛らしい容姿からは、到底想像出来ないような台詞を吐き捨てた。 「調子乗ってると、ぶっ潰す!!!」
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