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煌生も、それを見ていた私達も、周りにいた花見の見物客も、みんな言葉を失ってその光景を呆然と眺めていた。
「…ぷっ、」
その空気を初めに破ったのは他でもなく侑生で、堪えられなかったのか、くっくっと珍しくお腹を抱えながら笑っている。
隣にいる私もつられて思わず吹き出してしまった。
「……ねぇ。ハルにあんな技覚えさせたの誰?っていうかぶっ潰すって誰が教えたの?」
皐月が信じられないものを見るような目で私達を見てきたから、笑いつつもサッと視線を逸らした。
「あれは将来大物になるね」
「第二の麗誕生ですかね?」
「ちょっと。ぶっ潰すは確かに私の真似だと思うけど、飛び蹴りは私が教えたわけじゃないからね」
唇を尖らせながら彩綾とヤエに文句を零した時、タタタッとこちらに向かってハルが駆け寄ってきた。
「麗!今の見てた!?」
「うん、見てたよ。凄いねぇハル。自分よりも大きい子をやっつけちゃうんだから」
「あのね、麗の真似したの!」
「……ん?」
「あの日麗がお空を飛んだでしょ!?」
「う、うん?」
「私も飛べたよ!!!」
「んー…ん?んんん?」
「すごい気持ちいいね!!!」
「……」
「……麗さん?」
「さてと…ほら、みんなもうそろそろ帰る準備しよっか?」
「まてまて。おいこら、麗さん?」
知らぬ存ぜぬを貫き通して立ち上がろうとしたらすかさず皐月に引き止められてしまい、仕方なく再び腰掛けた。
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