二人の距離

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「はいはいなんですか」 「何開き直ってんのかな?」 「わ、悪いのはあの男の子だもんね!ねぇハル!」 「うん!あいつムカつく!マジでぶっ潰す!」 「ちょ、ハル。もうそれやめよっか?」 「ん?」 「ぶっ潰すはもう言っちゃダメよ」 「ぶっ潰す!」 「こら、ハル?」 「じゃあ麗がいつも言ってるぶっ飛ばすは?」 「……」 あどけない表情で聞いてくるハルには悪気なんてない。だからこそ余計に皐月の冷たい視線が突き刺さってきた。 「以後気を付けます…」 「ぶっ飛ばす!ぶっ飛ばす!」 「こ、こら!ハル!」 思わず大きな声を出すと、ハルは私を見上げてへらりと笑う。 その顔は、悪戯をして喜ぶ煌生と蓮の表情によく似ていた。 滅多に見ることのないハルの顔を見下ろして、ふと"もしかして"とある考えが頭を過ぎる。 「こら、まちなさい!」 「きゃー!!!!」 立ち上がった私に、ハルは大きな声を出しながら逃げるように走り出した。 その小さな背中を追いかける間にもハルはキャーキャーとはしゃいでいて、その姿を見ていると、たった今頭に浮かんだ考えが確信に変わった。 ハルが求めているのは、本当の家族みたいな温かさだ。 "可愛いね"とか、"いい子だね"とか、そんな褒め言葉だけじゃなくて、悪いことをすれば怒って欲しいし叱って欲しい。 ハルはそうやって愛情を確かめたいのだと、この時初めて気が付いた。 そしてそれを私に対して求めてくれたことが、凄く嬉しかった。 「ぶっ飛ばしてぶっ潰す!」 「こ、こら!やめろ!」 ……ただ、その言葉を言うのは本気でやめて欲しかったけど。
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