212人が本棚に入れています
本棚に追加
「麗」
「……うん?」
「私も聞きたい」
「……」
「お話、聞きたい。聞かせてください」
「ハル、」
「お願いします」
煌生とは打って変わって静かな声で話すハルは、私に向かって頭を下げてくる。
その小さな手が微かに震えていることに気が付き、たった今ハルの心を支配している感情がなんなのか手に取るように分かった。
きっと凄く怖いはずなのに。マーノの名前を聞くだけで、怖くてたまらないはずなのに。
どうしてハルはそんなにも強くいられるのだろう。
真摯に訴えてくる彼女に、駄目だと言えるわけがなかった。
「……じゃあ、話を続けるね。マーノが正式に捜査願いを出してきた以上は無視をすることは出来ないんだ」
「あいつらがハルにした仕打ちを考えたら返すわけにはいかないだろ」
「もちろんだよ。ただね、問題が三点ある」
「……」
「一つ目は、奴らがハルちゃんに酷いことをしたという決定的な証拠が何もないってことだ。例えば痣のことを指摘したとしても、マーノが『知らない』と言い張り、更に『その怪我は誘拐した連中のせいだ』と言い逃れる可能性が高いということ」
「だけどハルがマーノのせいだと言い続ける限り、保護を受けることが出来るのは事実だろ。実際にハルに酷いことをしたのはマーノの奴なんだから。なぁ、ハル?」
侑生の問い掛けに、私の隣に座っていたハルがこくんと頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!