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「もちろん保護を受けることは可能だけど、そこに二つ目と三つ目の問題点が絡んでくるんだ。それは、マーノが親権を持ってしまっていることと、ハルちゃんは自らマーノ家を飛び出したけど、マーノ自身はハルちゃんが誰かに誘拐されたと考えているということ。つまり、ここにハルちゃんがいるということは、オークションで保護したとはいえ、結果的には侑生君達がハルちゃんを軟禁していることになる。マーノが親権を持っている限り、奴らが訴えたら今の侑生くんの立ち位置は誘拐犯と同じだということになってしまう」
「まぁ、確かにそうだな」
「ただ警察の立場としても、ハルちゃんが酷い目に遭ったことが分かっているのにマーノに彼女を返すわけにはいかない。だから少しの間、ハルちゃんを警察の監視下の元に保護しておきたいんだ。こうしている間にも、もしマーノが法的に訴えればハルちゃんは有無を言わせずに親権を持つ奴らの元に送り返されてしまう」
「……」
「だから今すぐの措置的には、ハルちゃんが正式にマーノの元を去る手続きが出来るまではうちに預からせて欲しい」
マシロさんの説明はハルが苦しまないことを大前提としていて、尚且つそれはこちら側が不利にならないようにと練られた最善の策だった。
だけどそれは裏を返せば、ハルはしばらくこの場所を離れなければいけないということ。
それはきっとハルだけじゃなく、煌生にも、勿論私達にとっても、とても寂しいことだった。
そんな中一番初めに口を開いたのは、ずっと黙ったまま話を聞いていた煌生だった。
「そしたら…警察の元に行ったら、ハルはもう苦しまないの?」
「……ああ。そうしたら彼女は本当に自由だ」
「絶対に?マーノって奴に苦しめられない?」
「絶対に大丈夫」
煌生の疑問に答えるマシロさんはいつものおっとりとした口調じゃない。そしてその目付きはとても鋭かった。
それは、彼もまたマーノに対して強い憤りを感じていることを思い出させた。
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