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「あたし、行きます」
私の隣でそう言い切ったハルの声は、強い決心に満ちていた。
「そしたら私はずっと麗達のそばにいれるんでしょう?」
「……ハル、」
突然突き付けられた現実に、ハルは泣くことも悲しそうにすることもなく、私の手をそっと握った。
「あのね、麗。あたしとても寂しかったの」
「……」
「パパとママが死んじゃってとても寂しくて、色んな人のところに行ったのに、その寂しさが消えることはなかったよ。だから逃げ出したの。辛いのも苦しいのもそうだけど、すごく寂しくて、だから逃げ出したんだよ」
「……」
「このままもしかしたら、私はずっと寂しいのかなってすごく怖かった。……だけどね、そしたら麗が来てくれた」
「…っ、」
「麗が私を救ってくれたよ」
笑みを零してハルが一生懸命に伝えてくれるけど、私はちっとも笑うことが出来なかった。
駄目だと思いながらも涙がポロポロと溢れて、右手で口を覆いながら、せめて声だけは漏らすまいと何度も頷いた。
そして段々と鼻声になっていくハルの、一生懸命に紡ぐその言葉を、一言一句聴き逃すまいと胸に刻みつけた。
「私ね、今寂しくないよ」
「……ほんとに?」
「うん、ほんとに。あんなに寂しかったのに嘘みたい」
へへっと笑うハルの目尻から雫が流れ落ちる。その涙を優しく拭った。
「ハル、強い子だ」
「ほんと?あたし強い?」
「うん。私なんかより何千倍も強いよ」
「……麗。あたしこれからもちゃんと強い子でいるからね、そしたらまた私のことをお迎えに来てくれる?」
「うん……当たり前でしょ」
「ほんと?」
「もちろん。絶対、迎えにいくよ」
「約束ね!はいっ!!」
ハルが勢いよく小指を差しだしてきて、私がそれに指を絡めると、侑生も同じようにして指を絡めた。
「ゆーい、麗、大好きっ!!!」
──…私はこの日、泣きながら笑うハルと、一生忘れることの出来ない約束を交わした。
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