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「あたし達繋がってますもんね!」
「ハル、もう少し日本語上達しろよ」
「うるさい!小童が!」
「小童…」
「ハルちゃん、もうそろそろ行こうか」
運転席の窓から顔を覗かせて二人の間に入ったマシロさんに、ハルが「はーい」と返事をする。
「煌生、またね!」
「ああ、またな」
「大好きだぞ!」
「…お、おれ、俺も…」
「あ?聞こえないよ!女々しい奴はぶっ潰す!」
頬を膨らませたハルが拳を掲げながら殴りかかる動作をすると、煌生はその手を掴んで引き寄せた。
「わっ!」と驚きながらもその胸元に飛び込んだハルの耳元で、煌生が何かを囁く。
何を言ったのかはここまで聞こえなかったけど、ハルの顔が瞬く間に赤く染まったから、その珍しい反応に侑生と目を合わせた。
するとガバッと煌生から離れたハルは、あまりの恥ずかしさからか素早く車に乗り込んでしまう。
「ハル」
「……」
「いってらっしゃい」
「……いってきます」
ハルが照れ臭そうに答えれば、車はゆっくりと発進する。
窓から顔を出したハルが唇を噛みながら泣くのをこらえている姿を見ていると寂しくなったけど、煌生も必死に泣くのを耐えて笑っていたから、私も頑張って笑顔で見送った。
二人は、お互いの姿が見えなくなるまでずっと手を振り続けていた。
「ね、煌生、最後ハルになんて言ったの?」
「……秘密」
「えー!気になる!」
「帰ってきたらハルに聞いて」
「うん、そうしよう。早くハル帰ってこないかなぁ」
私の言葉に笑った煌生は、とても大事そうに、ハルからもらったリングに触れる。
それはまるで、『繋がってる』と言ったハルの言葉に答えているかのように見えた。
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