瞳に映るのは

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写真の中のハルはこんな時だって綺麗に映るのに、俺には分かった。 顔色が悪いことも、やつれて細くなっていることも、あの一枚で伝わってくる。 どれだけ酷い扱いを受けているのかと思ったら、気持ちばかりが先走って、もどかしくて、この逸る気持ちをどうすればいいのか分からなかった。 「煌生、戻ってまた探そう」 「……」 「ハルは生きてるから。どんなに辛い扱いを受けたって、必死に生きてる。俺らが嘆いている暇なんてないんだ。後悔すんのも下向くのもハルを取り戻してからだ」 言い聞かせるように言葉を紡いだ父さんは、俺の腕を掴んで立ち上がらせる。 そして真っ直ぐに俺の目を見据えるその眼差しは、どんなに苦しい状況に陥ったって、冷静さを失うほど取り乱したって、いつだって正しい方向に導いてくれる。 ハルが戻った理由は分からない。だけど確信はしていた。 ハルは何かしらの脅迫を受けてNoirに戻らざるを得なかった。じゃなかったらあいつが俺に何も言わずに、俺から離れていくなんて有り得ないのだから。 ハルがいなくなった日、ハルはやっぱり泣いていた。いつもそうだ。昔も、今も、俺から離れる時は、大抵そんな風に涙を流す。 だけど一つだけ違ったのは、あの時のハルは泣きながらも笑っていたということ。 『俺のことが好きか』と尋ねると、『大好きだよ』とハルは笑った。その笑顔の裏で、どれだけの悲しさを抱えていたのだろう。 「父さん」 「ん?」 「……ありがとう」 礼を述べる俺の横顔をちらりと見た父さんは、いきなり俺の頭をぐしゃぐしゃと撫で回してくる。 そして俺の背中を押すようにそこに触れると、口を開いた。 「ハルのこと、絶対に助けだそうな」 それは昔、俺が父さんみたいに強くなりたいと望んだ時に、父さんが俺に向けた言葉。 その時の景色を思い出しながら、俺は深く頷いた。
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